とのインタビュー Dalton Caldwell
Managing Director and Group Partner at Y Combinator
インタビュアー Lenny's Podcast • 2024-04-18

ダルトン・コールドウェルは、あらゆることを見てきた人物だ。Y Combinatorで10年以上にわたりマネージングディレクター兼グループパートナーを務める彼は、Instacart、Brex、DoorDash、Amplitudeといった有力企業を含む21を超えるスタートアップのバッチに関わってきた。数えきれないほどの起業家が会社設立という危険な道のりを乗り越える姿を目撃してきた彼の独自の視点は、比類ない知恵を提供してくれる。Lenny's Podcastでの最近のインタビューで、コールドウェルは、苦労して得た教訓を、スタートアップの旅に挑むすべての人々に向けて実践的なアドバイスとして凝縮した。
不屈の精神:スタートアップはなぜひたすら「死ぬな」なのか
ダルトン・コールドウェルの哲学の核心には、一見すると単純なマントラがある。「とにかく死ぬな」だ。彼はこれを、経験豊富なバスケットボールコーチがエリートアスリートに基本を再確認させるようなものだと例える。彼らがそれを知らないからではなく、絶え間ない肯定が彼らを正しい精神状態に保つからだ。コールドウェルは、成功するスタートアップは、外から見ると非合理的な粘り強さの行為に見えることが多いと強調する。彼はAirbnbを例に挙げる。YCに参加する前に「おそらく3、4回は閉鎖すべきだった」会社だが、その創業者たちは絶望的な状況にもかかわらず、「純粋に非合理的な行為」によって事業を継続したのだ。
この回復力は、単なる美談ではなく、共通のテーマである。コールドウェルは2017年冬のバッチを鮮明に記憶している。Vyond(VRヘッドセットのスタートアップ)とCashew(英国向けのPTP Venmoクローン)という2社は、客観的に見て苦境にあり、「恥ずかしく」「落胆していた」。しかし、VyondはピボットしてデカコーンであるBrexになり、CashewはRetoolに変貌した。これらの企業は、かつてバッチ内で「最悪」と見なされていたにもかかわらず、最大の成功を収めたのだ。いつ諦めるべきかという問いに悩む起業家のために、コールドウェルはシンプルなテストを提供する。「まだ楽しんでいるか? 今やっていることをまだ楽しんでいるか? 共同創業者との時間を楽しんでいるか?」もし答えがイエスで、まだ「やっていること、一緒にやっている人々、そして顧客を本当に、本当に愛している」なら、それは戦い続けるべきだという強いサインだ。逆に、彼は、スタートアップが失敗する最も一般的な原因は資金不足ではなく、希望の喪失だと指摘する。起業家が心の中で「自分たちは失敗していると諦めてしまう」時だ。
重要な洞察点:
- 非合理的な粘り強さ: 成功するスタートアップでは、すべての論理的な兆候が諦めるべきだと示しているにもかかわらず、起業家が純粋に非合理的な選択をして継続することがよくある。
- 羅針盤としての情熱: 仕事、チーム、顧客に対するあなたの楽しみが、継続するかピボットするかの強力な指標となり得る。
- 枯渇するのは資金ではなく希望: スタートアップが失敗する主な理由は、単に資金が尽きるのではなく、起業家の希望の喪失や内部の不和であることが多い。
- 瀕死の経験は普遍的: ダルトンは、起業家は「100%の確率で」、会社が崩壊寸前だと感じる瞬間に直面すると示唆している。
ピボットの技:スタートアップの荒野で安住の地を見つける
コールドウェルはしばしば「ピボットの王」と呼ばれている。これは、多くの起業家を変革的な変化へと導いてきたことで得た称号だ。彼は、「良いピボットは家に帰るようなものだ。より暖かく、自分が専門とするものに近い」と説明する。例えばBrexは、創業者がブラジルでフィンテック企業を立ち上げた経験があったため、VRヘッドセットからフィンテックへと事業を転換した。同様に、Retoolは苦戦していたPTP Venmoクローンのために構築した社内ツールやダッシュボードを活用し、自分たちの真の専門知識が開発者ツールにあることに気づいた。
専門知識は既存のものではなく、初期の試行錯誤の中で培われることもある。Segmentの創業者たちは、当初は大学生向けのソフトウェアを開発していたが、アナリティクスの理解を通じてピボットし、最終的には初期のベンチャーで得た教訓からイベントルーティングの価値を認識した。「分析がどのように機能するのか何も知らなかったので、彼らがSegmentのアイデアを思いつく宇宙は存在しなかっただろう」とコールドウェルは指摘し、洞察は努力の中から生まれることを強調している。起業家はいつピボットを考えるべきか? 成長のための「アイデアが尽きて」、提案される解決策が戦略的な動きというよりは絶望的な響きを持つときだ。真に斬新なアイデアを見つけるために、コールドウェルは起業家に対し、「情報摂取源を多様化し」、「既存の枠にとらわれず」、Zipの創業者たちが「既存企業が存在する、しかしソフトウェアがひどい、既知の大きな市場」をターゲットにしたように、独自の個人的経験を活用するようアドバイスしている。
重要な変化点:
- 既存の専門知識を活用する: 成功するピボットは、創業者を彼らが生まれつき持つ知識や情熱の領域に近づけることが多い。
- 失敗から学ぶ: 初期段階のスタートアップのアイデアは、たとえ失敗しても、その後の成功するピボットに役立つ独自の専門知識を構築することができる。
- アイデア枯渇はシグナル: 真に影響力のある成長アイデアが尽きたとき、それはピボットを検討する時期だという強力な指標となる。
- 情報摂取の多様性: 「タールピット」のようなアイデアを避け、真の機会を見つけるためには、他のすべての起業家が消費しているものだけでなく、情報源を広げるべきだ。
タールピットを回避する:魅力的だが致命的なアイデアを避ける
コールドウェルは「タールピットのアイデア」という概念を導入した。これは、見かけの約束と肯定的なフィードバックで起業家を引き込むが、歴史的に規模拡大が不可能であることが証明されているアイデアを指す。これらは単に「難しい」アイデアではない。「未解決の問題のように見え」、興奮を呼ぶが、「人々は90年代からそのようなスタートアップを立ち上げている」のだ。典型的な例は、「夜に友達とどこへ行くか決めるための調整アプリ」で、熱狂的な支持を得るが、一貫して普及に失敗している。コールドウェル自身も、最初のスタートアップで「音楽発見」というタールピットに陥ったことを認めている。
投資家がなぜ「ノー」と言うのかについて議論する際、コールドウェルは起業家に対し、投資家の立場になって考えるよう促す。投資家は限られた数の投資を行うため、「ノー」はアイデア自体への判断ではなく、「よりリスクの低い他の機会」があるか、単に「より高い基準を満たす何かを待っている」ことの表れだ。市場規模(TAM)は微妙な要素だ。後期段階の投資には不可欠だが、コールドウェルはYCの初期段階ではあまり懸念されないことを明らかにしている。彼はインドの主要な決済処理業者であるRazer Payを例に挙げているが、2015年当時、クレジットカードの利用率が低かったため、TAMは「ごくわずか」だった。投資家は市場が「100倍」になると信じる必要があり、実際にそうなった。YCにとっての焦点は、「人々が欲しがるものを作っているか」であり、細かすぎるTAMの計算ではない。
重要な学び:
- タールピットを特定する: 容易に肯定的なフィードバックを生み出し、常に「未解決の問題」のように見えるが、失敗の長い歴史を持つアイデアには警戒するべきだ。
- 投資家の心理: 投資家の「ノー」は、より良い選択肢があるか、より高い確信を求めていることに起因することが多く、必ずしもあなたのアイデアの欠陥ではないことを理解する。
- 初期段階のTAMの柔軟性: プレシードおよびシードステージのスタートアップの場合、市場は指数関数的に成長する可能性があるため、厳密な市場規模の予測よりも、人々が欲しがるものを作ることに注力する。
- 「クレイジーな飛躍的な信頼」: 機会がそこにあるのであれば、現在の市場規模が小さく見えても、将来の市場成長について説得力のある議論をする準備をしておくべきだ。
キーボードの向こう側:顧客とのつながりを執拗に追求する
元YCの同僚であるグスタフは、スタートアップが失敗する最も一般的な理由は「顧客と話さないこと、プロダクトマーケットフィットを見つけられないこと」だと考えている。コールドウェルは全面的に同意し、重要な要素を付け加える。起業家は「過度に委任せず」、「物事に密接に関わる」必要があると。彼は、「非常に早い段階で華麗な履歴書を持つ超ベテラン人材を雇うという罠」を警告する。これは、創業者が初期段階で必要とされる実践的な関与から遠ざかる原因となりかねない。「ユーザーを気にかけることや、製品が素晴らしいものであることを気にかけることは委任できない」と彼は断言する。
戦術的に、コールドウェルは起業家に対し自己評価を行うよう促す。潜在顧客と何回直接会ったか? 彼は「時間の20%から30%」は「顧客との会議、顧客との電話」に充てるべきだと提案する。彼は、Zipの創業者が「企業との電話を誘うのが獣のようにうまかった」と語る。何百人もの人々にLinkedInでコールドDMを送り、調達ニーズを理解しようとしたのだ。この顧客への執着を最も鮮明に表すのは、Stripeの初期の有名な「コリジョン・インストール」だ。パトリック・コリジョンとそのチームは、顧客のオフィスに「立ち寄る」ことを提案し、Stripeが彼らのウェブサイトに完全に実装されるまで、実質的に「帰らなかった」という。この「ホワイトグローブサービス」は、顧客が製品を購入するだけでなく、実際に使用することを保証し、営業の「最後の1マイル」を埋め、顧客が「イエス」と言った後も、真に顧客に奉仕する仕事は続くことを示している。
重要な実践:
- 創業者主導の製品とユーザー: 製品開発と顧客理解に深く個人的に関与し続ける。早期にベテラン人材に過度に委任することに抵抗する。
- 顧客エンゲージメントを優先する: 解析や広告キャンペーンだけに頼るのではなく、時間の20〜30%を直接的な顧客ミーティングや電話に積極的に充てる。
- 対面でのつながり: リモートコミュニケーションよりも実際の対面での会話を優先し、社会的な気まずさを乗り越えて真の理解を築く。
- 営業の「最後の1マイル」: 顧客が製品を正常に実装し、積極的に使用するまで、あなたの営業プロセスは完了ではない。これには積極的なサポートが必要となる。
「合理的に考えれば、創業者はいずれかの時点で諦めるべきだったというのが根底にあるテーマだ」 - ダルトン・コールドウェル


