とのインタビュー Todd Jackson
Partner at First Round Capital
インタビュアー Lenny's Podcast • 2024-04-11

スタートアップの世界で「手に入れたらすぐにわかる」と囁かれる魔法の秘密のように感じられがちな、掴みどころのないプロダクトマーケットフィット(PMF)という概念。しかし、もしそれが単なる魔法ではなく、体系的な道筋だとしたらどうでしょう?これこそ、Gmail、Facebook、Twitter、Dropboxといった伝説的なプロダクトのバックグラウンドを持つFirst Round CapitalのパートナーであるTodd Jackson氏が、Lennyとの最近の洞察に満ちた対談で解明しようと試みたものです。プロダクトリーダーとして、また投資家としての長年の経験を活かし、Jackson氏とFirst Roundは、PMFへの道のりを、創業者の成功確率を高めることを目的とした、実践的で具体的なフレームワークに凝縮しました。
PMFのパラドックス:なぜ不明瞭なものにフレームワークを?
多くの創業者にとって、プロダクトマーケットフィット(PMF)は曖昧な目標であり、科学というよりも芸術として捉えられがちです。その極めて重要な性質にもかかわらず、それを達成するための具体的で戦術的なガイダンスは驚くほど不足しています。Todd Jackson氏は、「PMFは、スタートアップが最初の3年間で取り組むべき最も重要なことだが、トピックとして探求も説明も不足している」と嘆きます。このギャップこそが、Jackson氏とFirst Roundのチームが1年以上にわたりデータと数百のスタートアップの道のりを分析し、一貫したパターンを特定するきっかけとなりました。彼らの目標は成功を保証することではなく、最初の6〜9ヶ月間を乗り切る初期のB2B創業者にとっての運の要素を減らす、体系的な道筋を提供することにあります。
重要な洞察:
- PMFは極めて重要: スタートアップにとって最初の3年間で最も重要な要因であり、成長を促進し、採用やプロダクトの方向性といった課題を簡素化します。
- 具体性の欠如: 既存のPMFに関するアドバイスは「見ればわかる」といった曖昧なものが多く、より科学的で戦術的なアプローチが求められています。
- 構造化されたガイダンス: このフレームワークは、明確な道筋、変化を起こすための手段、各段階における明確な目標を提供することで、成功の確率を高めることを目指しています。
「見ればわかる」を超えて:PMFの4つのレベル
このフレームワークの中核となる信条の一つは、PMFが二者択一の状態ではなく、明確なレベルを経て進む連続的な道のりであるという点です。それは数年、特に優良なエンタープライズ企業では4〜6年かけて展開されます。Jackson氏は4つのレベルを紹介します:Nent、Developing、Strong、そしてExtremeです。それぞれが独自の優先順位とトレードオフを伴います。究極の目標である「Extreme Product Market Fit」は、「重要なニーズを満たし、かつ各顧客に繰り返し効率的に提供できる製品に対する広範な需要がある状態」と明確に定義されています。
この定義は、3つの極めて重要な側面を強調しています:需要、満足度、効率。「効率」の包含は特に注目に値します。Jackson氏が指摘するように、これは見過ごされがちだからです。彼はこれを「100ドル出てくる自動販売機」のたとえで説明します。1ドル入れると100ドルが出てくる機械を想像してみてください。需要は尋常ではなく、満足度も極めて高いでしょうが、経済的に成り立ちません。「それは本当のプロダクトマーケットフィットではありません」とJackson氏は明確にし、効率がなければ、高い需要と満足度がある製品であっても持続不可能であると強調します。企業がレベルを上げるにつれて、これらの側面をバランスさせ、多くの場合、トレードオフを行う必要があります。
重要な学び:
- PMFは道のり: 単一の「これだ!」という瞬間ではなく、Nent、Developing、Strong、Extremeという4つの明確なレベルを経て進みます。
- 3つの柱: 真のPMFは、需要、満足度、そして極めて重要な効率のバランスを必要とします。これは創業者にしばしば見過ごされがちな側面です。
- 限界顧客への注力: PMFが強まるにつれて、「限界顧客」(次に増える顧客)を獲得し、サービスを提供することが、漸進的に容易かつ効率的になるはずです。
レベル1:Nent Product-Market Fit – 始まりの熱気
Nentステージは、プレシードまたはシード期の10人未満の企業に典型的で、焦点はひたすら顧客の深い満足度にあります。そのミッションは、深く重要かつ緊急の課題を抱える3〜5社の顧客を見つけ、その上で重要な約束を果たす、非常に満足度の高いソリューションを提供することです。非効率性は許容されるだけでなく、しばしばその洞察を発見するために必要です。コンプライアンス自動化の強豪であるVantaは、その完璧な例を提供します。創業者Christina Cacioppoは当初、SegmentやFigmaのような初期顧客のために、手作業でスプレッドシートを埋めてコンプライアンスを確保していました。彼女の「プロダクト」は実質的に彼女自身の人的労力でしたが、「この製品があなたの収益の鍵を開き、このエンタープライズ取引を獲得できるようになるだろう」という深遠な約束を果たしたのです。
この段階の創業者は、需要を確保するために主に自身のネットワークに依存し、高いコンバージョン努力(例:1人の顧客を獲得するために20回の温かい紹介)を払います。バーンマルチプルや粗利益率のような指標は無関係です。目標は、構築しているものが本当に共感を呼んでいるという進捗感を実感することです。しかし、もし行き詰まったらどうするか?ここでJackson氏が紹介するのが「4つのP」です:Persona(ペルソナ)、Problem(問題)、Promise(約束)、そしてProduct(製品)。現在主要な人材管理プラットフォームであるLattisは、OKRツールとして有名に始まりました。創業者Jack Altmanは顧客に「フレンズゾーン」にされてしまいました。顧客は彼の製品を気に入っていましたが、それを「必要」とはしていなかったのです。彼はペルソナ(HRリーダー)は維持しつつ、問題、約束、製品を転換し、パフォーマンス管理へと移行しました。「彼はFigmaのモックアップのようなもので最初の5〜10社の顧客を獲得したと思います」とJackson氏は語り、製品を再構築することなくPを変えることでいかにPMFが解き放たれるかを強調します。PersonaのRick Song氏は、創業者が「フレンズゾーン」にされないよう、顧客に直接尋ねることを促しました。「[私の製品]はあなたの会社にとって必需品ですか?もし私たちがなくなったら、どれほど痛手になりますか?もし競合他社が私たちの半額で製品を提供したら、そちらに切り替えますか?」
主要な実践事項:
- 3〜5社の顧客に超集中: 緊急かつ重要な問題を抱える少数のユーザーを特定し、その問題を深く解決します。
- 非効率性を受け入れる: この段階では、手作業や「オズの魔法使い」のようなソリューションが、深い顧客満足につながるなら許容されます。
- 「4つのP」を反復: 行き詰まったら、Persona、Problem、Promise、Productを体系的に分析し、どこをピボットすべきかを特定します。
- 「フレンズゾーン」を避ける: 顧客から率直なフィードバックを積極的に求め、あなたの製品が単なる「あったらいいな」ではなく、極めて重要な必需品であることを確認します。
レベル2:Developing Product-Market Fit – 最初の火花を拡大する
レベル2のDeveloping PMFへ移行すると、任務は5社の満足した顧客から25社へと変わります。この移行は、需要が満足度と等しく重要になる地点を示します。「純粋な意思力だけで25社もの顧客を獲得し続けるのは非常に困難です」とJackson氏は指摘します。製品自体が需要を牽引し始め、単なる温かい紹介を超えて、コールドアウトリーチ、コンテンツ、コミュニティイベントなどのスケーラブルなチャネルの初期兆候へと移行する必要があります。
この段階の企業は、シードまたはシリーズAの企業であり、従業員数は最大20人、ARRは50万ドルから500万ドルの間かもしれません。創業者は、マジックナンバーが0.5から0.75の間、リテンションベンチマーク(例:NRRが少なくとも100%、後悔される解約が20%未満)、粗利益率が50%以上といった基本的な営業指標を検討し始めます。First Roundの別の投資先であるLookerは、この変化をよく表しています。創業者Lloyd Tabbはレベル1で長期間を費やし、実質的に最初の5社の顧客のために彼らのデータをモデル化し、価値を実証するためのコンサルティングを行っていました。深い満足度が確立されると、再現性のある製品と営業プロセスにより、彼らはレベル2をスムーズに進み、その初期の火花をより広範な需要へと拡大させることができました。
主な変更点:
- 顧客基盤の拡大: 目標は3〜5社の満足顧客から25社へと移行し、純粋な意思力からの脱却が必要となります。
- スケーラブルな需要の開拓: 個人的なネットワークを超えた、早期の再現性のある需要チャネルへの投資を開始します。
- 初期指標への注力: ARR、マジックナンバー、リテンション、粗利益率といった主要な営業および効率性指標の追跡を開始しますが、これらがまだ主要な焦点ではありません。
「極端なプロダクトマーケットフィットを見つければ、その勢いがあなたを運び、市場があなたを引き寄せ、顧客が望むものを構築しているため、何を作るべきかを知るのが容易になります。チームとしてモチベーションが上がり、人材採用も容易になり、何もかもが簡単になります。プロダクトマーケットフィットを見つけること、それが会社を推進する原動力となるのです。」 - Todd Jackson


