とのインタビュー Patrick Collison
Co-Founder of Stripe
インタビュアー Greylock • 2015-11-04

Greylockの「Blitzscaling」クラスの魅力的なセッションで、Stripeの共同創業者兼CEOであるPatrick Collison氏が、世界で最も影響力のあるテック企業の一つであるStripeの黎明期、根底にある哲学、そして独自のスケール戦略について、貴重な洞察を語った。深い思慮と幅広い知性で知られるCollison氏は、一般的なスタートアップの逸話にとどまらない物語に満ちた議論を展開し、意欲的な起業家から経験豊富な開発者まで、誰もが貴重な教訓を得られる時間となった。
Stripeの誕生:iPhoneアプリから「ヤクの毛刈り」へ
Stripeの物語は、Patrick Collison氏が語るところによると、グローバル決済の壮大なビジョンからではなく、一見些細な不満から始まった。彼と弟のJohnは、大学の学費を稼ぐためにiPhoneアプリを開発しており、アプリのエコシステム内での課金がいかに信じられないほど簡単であるかに気づいた。これは、オンラインでの決済受付の悪夢と対照的だった。「なぜ私たちはオンラインで何も課金しないんだろう?」Patrick氏は考え、「インターネットで決済を受け付けるのは本当に骨が折れる。あらゆる面倒な手続きを踏み、基本的に抵当権を設定するようなものだ」と悟った。
サーバーインフラ提供におけるSlicehostのシンプルさに触発され、Collison兄弟は「決済版Slicehost」を構想した。2009年10月、Johnは「とりあえずプロトタイプを作ってみよう、そんなに難しくないだろう」と何気なく提案した。Patrick氏は、Stripeの従業員であるAvi Bryantが、会社全体を「史上最大のヤクの毛刈り(延々と続く前段階の作業)」と呼んだことを懐かしそうに語った。彼らの最初のプロトタイプである/dev/paymentsは、2010年1月に数人の友人に公開され、「ダクトテープと針金」で構築された粗末なものだったが、APIに特化した製品としては異例なことに、口コミで瞬く間に広まり、彼らを驚かせた。LispプログラミングコミュニティやY Combinatorにおける初期のネットワークは非常に貴重だった。なぜなら、起業しようとしていた友人たちが、まさに彼らが作っていたものを必要としていたからだ。
重要な洞察:
- 根本的な課題を特定する: Stripeは、驚くほど困難だった既存のプロセス(オンライン決済)に対する深い不満から生まれた。
- シンプルさを活用する: 「決済版Slicehost」というアイデアは、複雑な技術的問題であっても、信じられないほどシンプルなユーザー体験が持つ力を際立たせた。
- 初期の手作業プロセスを受け入れる: 当初、何十人ものユーザーのために手作業で書類を作成することで、時期尚早な自動化をせずに需要を検証することができた。
歴史への深い探求:イノベーションの「チートコード」
Patrick Collison氏の開発へのアプローチで最も際立った側面の一つは、歴史に対する深い敬意である。彼は「大量の歴史書」を読んでいることを公言し、それを「チートのようなものだ」と捉えている。「他の誰もが歴史からの良いアイデアを無視しているので、自分ははるかに賢くなれる」と。Collison氏は、コンピューターサイエンスの「ポップカルチャー」的な性質を嘆く。そこでは、進歩が「問題空間をブラウン運動するようなもの」に感じられ、以前の進歩がほとんど顧みられないというのだ。
彼は、1967年から68年にかけて、マウスを発明しただけでなく、リアルタイムの共同作業型ワードプロセッサ、ビデオ会議、ハイパーリンクをデモしたDoug Engelbartのような先駆者たちを例に挙げる。これらは今日でさえ「Hangoutsより優れている」と言えるシステムだった。この初期の仕事は、「知能増幅(intelligence augmentation)」と「人類の知性の増強」というビジョンに突き動かされていた。これは、多くの今日のテクノロジーが基本的なユーティリティやエンターテイメントに焦点を当てているのとは全く対照的だ。Collison氏は、業界が「ツールの体系的な過小評価」とその実現する影響に苦しんでいると考えており、Stripeの哲学をこう集約している。「ほとんどのテクノロジー企業が車を作っているのに対し、Stripeは道路を作っている、というような区別だ。」
重要な学び:
- 歴史を戦略的優位性として活用する: 意図的に過去のイノベーションや哲学的アプローチを研究することで、見過ごされてきたアイデアを発掘し、ユニークな視点を得られる。
- 現代の野心を問い直す: 現在の技術的取り組みが「知能増幅」という根源的な野心と合致しているのか、それとも主にユーティリティやエンターテイメントに貢献しているのかを熟考する。
- 基盤となるインフラに焦点を当てる: 他者を力づける基本的なツールやプラットフォームを構築することが、甚大でありながら、しばしば目に見えにくい影響力を持つことを認識する。
目的を持ったスケール:従来型組織と型破りな採用
Stripeの組織について議論する際、Patrick氏は新鮮で地に足の着いた視点を提供する。従業員数330名で毎年倍増しているStripeは、「驚くほど従来型の組織」だという。彼は、初期段階のスタートアップにおいて「人類の性質を再考しようとする誘惑」に警鐘を鳴らし、むしろ「その内なる声に逆らうべきだ」と助言する。その理由は二つある。一つは、GoogleやFacebookのような巨大企業において標準的な組織構造が有効であることが証明されていること。もう一つは、「あなたが思いつく代替案は、まだ経験したことのないことであり、予測するための人生経験がまだ足りない」からだ。
Stripeは従来型の組織構造を受け入れている一方で、特に採用においては、シリコンバレーに根付いた他の常識に激しく疑問を投げかける。Patrick氏は、Google自身の調査で仕事のパフォーマンスと「ほとんど相関がない」とされているにもかかわらず、アルゴリズム式のホワイトボード面接が「異常な」ほど普及していることを指摘する。Stripeのアプローチは異なる。「Stripeの従業員が実際に日々何をしているのか...彼らはラップトップでコードを書いている、ということを考えようとしているだけだ」。彼らの面接では、候補者が慣れた環境で自分のラップトップを使ってコーディングする。この実用的な変化は「非常にうまく機能している」という。
主な実践:
- 従来型組織を標準とする: 組織構造における不必要なイノベーションは避け、主要な製品とビジネスの課題にエネルギーを集中させる。
- 採用における第一原理: 受け継がれた業界の慣習ではなく、従業員が実際に日々行う仕事に基づいて面接プロセスを設計する。
- 「ミーム的力」に異議を唱える: 経験的裏付けがなく、自社の現実に合致しない広く採用されている業界の慣行に批判的であること。
APIを超えて:Stripeの進化する製品と「道路を築く」
Stripeのシンプルな決済APIにおける初期のプロダクトマーケットフィットは明確だったが、Patrick氏はその道のりが「連続的なプロダクトマーケットフィット」を含んでいたと強調する。Collison兄弟は早い段階で、市場が「ごく小さく」、消費者支出の約2%しかオンラインで行われていないことに気づいた。これは、スマートフォンの世界的な普及と有望な新興市場を背景に、巨大な成長可能性を示唆していた。
重要なことに、Stripeは「ますます複雑になる取引志向のサービス」という新たな波を予測し、それに対応するものを構築した。これにより、Instacart、Uber、Airbnbのようなマーケットプレイスが複数当事者間の決済を促進できるConnectのような製品が生まれた。「これらは、それが不可欠な一部となる、新たな種類の実世界経済関係なのです」とPatrick氏は説明する。彼はこれをPayPalのような単純な個人間送金とは区別し、表面的には似ているものの、根底にある問題は「全く異なる」と強調する。返金、チップ、国際的な複雑さ、税務問題への対処などがそれだ。このより深いインフラへの焦点は、部外者には理解しにくい一方で、「競争相手も本当の意味で理解していない」ため、戦略的優位性となっている。
主な変化:
- 市場の進化を予測する: 明確な問題から始まったとしても、「より大きな世俗的トレンド」や、より複雑なソリューションを必要とする新たなユースケースを積極的に探す。
- 基盤となるインフラを構築する: 単一のアプリケーションではなく、新たな経済モデルをサポートするプラットフォームを可能にすることに注力する。
- 複雑さを戦略的に受け入れる: より深く、より複雑な問題を解決することが、その価値がすぐに明らかでなくても、防衛的な堀(競争優位性)を生み出すことを理解する。
人材への執着:焦らない採用の術と初期からの協力者
Stripeの初期について最も印象的な発見の一つは、採用における極端な忍耐力だった。Patrick氏は、「人を採用するのに本当に長い時間がかかり」、最初の2人の従業員は6ヶ月かかり、実質的に「四半期に一人」だったと述べる。この苦痛を伴う粘り強さには、「一週間の試用期間」や、彼が冗談めかして「3ヶ月間の人生についての会話、つまりセラピーセッション」と呼ぶものが含まれていた。彼の哲学は、「まず優秀な人材を探し、次に彼らに興味を持ってもらうように働きかける」ことであり、これは長期にわたる採用サイクルを許容することを意味する。彼は、「Stripeには現在、採用に数年かかった人が何人もいる。私の頭に浮かぶだけでも、3年以上かけて採用した人が5人いる」と語る。
この品質へのこだわりは、エンジニアリング以外の役割にも及んだ。初期段階で、銀行との関係構築という困難な課題(Wells Fargoは当初拒否した)に直面した彼らは、投資家のGeoff Ralston氏にアドバイスを求め、Lalaの共同創業者であるBilly Alvarado氏を紹介された。5番目か6番目の社員として「BD担当者」を採用することへの社内での苦悩(「彼はコードを書かない。コードを書かない人を採用すべきだろうか?」)にもかかわらず、Billyは非常に貴重な存在であることが証明された。彼は2ヶ月でWells Fargoとの関係を確保しただけでなく、Collison兄弟が手動で給与を計算していた頃に、「給与はどのように処理するのか?」といった初期の質問をするなど、重要な運用知識をもたらした。これは、戦略的な必要性が生じた際に、真に優れた人物が持つ「光円錐(light cone)」のような影響力を信じて、型破りな採用を行うという会社の意欲を例示している。
主な実践:
- 採用における徹底的な粘り強さ: 各採用を「潜在的な未来の組織の巨大な枝」と見なし、絶対的に最高の才能を引き寄せるために、膨大な時間と労力、時には数年を費やす覚悟をする。
- 即座のスキルフィットよりも才能を優先する: まずは卓越した個人を見つけることに注力し、次に彼らの関心を自社のニーズと合致させるように働きかける。
- 戦略的な非エンジニア採用: コアエンジニアリング以外の専門知識(例:事業開発、運用)が、ごく初期段階であっても重要であると認識する。
「ほとんどのテクノロジー企業が車を作っているのに対し、Stripeは道路を作っている、というような区別だ。」― Patrick Collison


